丁寧を武器にする なぜ小山ロールは1日1600本売れるのか?

著者(編集者):小山 進
出版社:祥伝社

エス小山は開店して9年(2012年)になるケーキ屋。当初1店舗8名でスタートしたが、今では50名の社員とアルバイト170名、日々120人体制で16億円売り上げる。1500坪の敷地内に6つの店である、そしてエスコヤマは一種の学校だと考えてきた、「丁寧さ」を育てるための学校だ。
美味しいものだけを作っていれば認めてもらえる。これは単なる自己満足である。今の時代、お菓子は美味しくて当たり前である。自分がケーキを通して何を伝えたいのか、どのようにその想いを伝えればいいのか。お菓子にこめた想いは、材料に何を使い、どのような風味や香りがするのか、なぜソレを作ろうと思ったのか、それを文章だけではなく、イラストや写真も入れて、しっかりとその意図が伝わるように工夫し、出来たのがお菓子の説明書。
アイデアを思いついたとき、すぐメモ書きをする。そして企画を考えることから始める、そのテーマで何を伝えたいかだ。試作はその後、翌日以降まだそのアイデアにときめくのであれば試作を開始する。
素材選びは、「@@産の卵がいい」というアピールで売れる時代は終わった、その卵を使っていれば美味しくなるのではなく、自分の伝えたいストーリーや歴史にあった、本当においしい卵を使わないとフィットしない。
ロールケーキはどこにでもある定番ケーキ、小山ロールは1本1260円、原価は高い。目標は「水や空気のように、人の好みを超えたものを作りたい」「普通じゃダメ、とびきりでないと」「シンプルで懐かしさを秘めたもの」斬新なロールケーキではなく、すべての世代に受け入れられるような普遍的ロールケーキを作りたい。そのとき頭に浮かんだのが、「ふっくらと美味しく炊き上がったご飯」、美味しいケーキは何、好きな料理は何と尋ねれても答はばらばら、しかし主食は何と尋ねたらお米と返ってくる。炊き立てのご飯のような、ふんわりとしていながら、もちっとして、なおかつしっとりとしたロールケーキを作れば普遍的となる。そして足掛け3年、その 日々日々の課題克服に活かされたのは子供の頃の多くの思い出だった。
バウムクーヘンは、SMLの3サイズ。Sサイズは子供の頃に山で遊んだ思い出。Mサイズは学生や修行時代に人としての根っこを広げる物語。Lサイズは独立後に自分が子供の遊ぶ木を植える番だと決意する話。そしてコンフィチュールとのセットは、人の成長を木に喩えて、素直に育った人には実がなるという話。
ケーキ屋にも営業、製造、企画、広報、事務、、色々と仕事がある、どんな仕事も受身でしている限りクリエイティブにはならない。よく仕事に飽きたときくが、どんな仕事も慣れれば飽きる、個人が創造性を持ち続けなければ、場所が変われど同じ境遇が身にかかる。
エスコヤマのコヤマロールを任されると2年。1つの商品を深く掘り下げるて考えることで初めて基礎力がつく。その基礎力の一つが丁寧な力。
昔ながらの職人のように、先輩から盗んで覚えろでは伝わらない。その日々感じたことを、そのまま注意する。分かるまで言い続ける。なぜ、小さいことにまで口を出すのか、それは、どんな小さい問題でもどう影響するのか想像力を働かせて、どう対処すればいいのかを考える人になってもらいたいから。「小さいことをおろそかにする人は、必ずおおきなこともおろそかにする」。大小で力の加減が出来るほど、人は器用ではない。
長く続けるには、集中力をいかに効率よく活かすかがポイント。短時間で最大のパフォーマンスを引き出せるようになるのが、継続するための理想条件。
エスコヤマでは朝礼と終礼をやっている。朝礼ではその日の目標を発表し、終礼では反省点を報告しあう。どんな小さな問題でも皆で解決策を探る。その積み重ねで「まあええか」と目をつむらず、正面から向き合えるようになる。
夢というのは具体的な目標の集大成だと考えている。「なりたいな」ではなく、やらなければいけないことなのだ。
良い仕事とは自分の評価で決まるものではない、まわりの人に評価されてはじめて良い仕事となる。人が集まってきていないのならば、売れていないのであれば、自分は良い仕事をしていないのだと自覚するべきだ。仕事をお願いされたとき、嫌な顔をすれば次からは頼みづらくなる、そうやって自分の機会を遠ざけていってします。この仕事は自分に向いていない、不景気だから、、、、言い訳はやめて自分に人が集まるように何をすべきか考えよう。売れる力を持ったなら、どの部署でもどの会社でも繁盛する。
壁に向かって仕事をするな、
厨房では部屋全体を見渡せる位置に立ち、先輩達の様子を観察した。食器が下がればすぐ洗い、先輩がやっているケーキの飾りつけの苺がなくなればすかさず補充をする。先輩の表情や行動から何を必要とするか予測して先に動くようにしていた。自分が常に店全体を俯瞰して、自分はどういうポジションで、どういう仕事をすべきなのかを考えた。先輩達に「あれせい、これせい」とせっつかれて行動しているようでは、いつまでたっても仕事は身につかない。自分で考え行動するから、仕事は覚えられる。
リーダーに必要なのは、自分の足りないことを知ること。
得にリーダーは圧倒的な得意技がないと信頼はされないが、完璧である必要はない。
仕事をできるようになれば、誰も文句を言えなくなる。
「お前は圧倒的に、人に何もいわさへんぐらい頑張れ。中途半端じゃあいかん。普通に頑張ってるだけやったら、絶対におまえはつぶされてします。お前に文句を言いたいやつはいっぱいおるんやから。圧倒的でないと、俺もお前を推せない。頑張るのも、人よりも圧倒的に頑張れ、それは仕事ができものの宿命なんや」
「人って、意外と自分の使い方を知らないでしょう。例えば、電子レンジは電子レンジであって、冷蔵庫にはなれない、みたいな。でも電子レンジなのに、冷蔵庫になりたがる人が多いんですよ。それを電子レンジとして成功させるのが、リーダーの仕事」
最高の二番手にはなれても、一番手にはなれない、三番手がもっとも似合うスタッフだっている。
3位を狙えば5位にしかなれない
オリンピックやワールドカップで「日本チームはベスト16が目標」とか「3位入賞が目標」とよくきくが、こう語っているチームで、優勝や金メダルをとったケースはほとんどない。目標をどこに置くかでその過程が変わる、努力の度合いが変わってしまう。すなわち優勝したいと思わねば優勝できない。
皆さんは、出会うべき人とで出会っているだろうか。その出会いをどう活かせているだろうか。
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